留学事情:栄陽子留学研究所
■ 当世留学事情

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第76回 もはや小学生も留学時代? 『教材新聞』平成13年7月30日号掲載 

小学生を留学させたいという相談が来るようになりました。小学校から英語を教えるということが一般化してきたのが要因と考えられます。

何でも早いほうがよい。鉄は熱いうちに打て、という考え方を盲信することによって起こることです。

父親の転勤によって海外へファミリーで行った人たちは、それなりに大変なのです。日本語はしっかり覚えさせないといけないし、かといって現地の言葉もしっかり理解させなければ、一人歩きできずに危険だし、ということもあります。突然の環境の変化で、病気になる子供もいて、親たちはハラハラドキドキです。月曜日から金曜日まで現地の学校に行って、土曜日は日本語学校に行くとか、母親が日本から教材を取り寄せて漢字を教えるとか、それは涙ぐましい努力が必要です。

駐在員の人たちにとって、外国での子供の教育は本当に大変なのです。同じ兄弟でも全く性格も異なり、また、現地で出会う環境や人々との幸運不運もあります。ある人の子供は二歳違う上の子はすぐに友達もでき、先生にも細かく面倒を見てもらってうまくいったのに、下の子は全く話さず、周りも無視で、一年間ただただ絵を描いていて、分からなくても出来なくても全く自分の勝手というように考え方が出来上がっていったそうです。

九歳から十四歳ぐらいの間に生活した場所の言語や考え方、習慣が生活に大きな影響を与えるらしいと学術的にはいわれているようですが、その影響がその子にとって良いのか悪いのか、大変難しい問題です。

両親が揃って一緒でも、これだけ問題が大きいのですから、ましてや本人一人で行くなんて大変なことです。そういう話をしたら、母親が自分も付いて行って一緒に住むというわけです。お父さんは、子供の教育のためなら放っておいていいということですね。

まあ、単身赴任なんて考えのある日本ですから、会社のため、仕事のため、教育のためなら家族がバラバラでも構わないということなのでしょうが、本来、教育は、まず家庭にその基本があるわけで、夫婦円満、家族仲良くというごく平凡なことが人間を形づくるのにとても大切なことですから、英語教育のためにお母さんと子供が出かけていくなんていうのも「そこまでやるか!!」と言いたくなります。

普通、親子の留学なんていうものは、子供が行きたいのではなくてお母さん自身が行きたいわけで、お母さん主体である場合は、子供はお母さんの勉学の姿や行動力を目のあたりにしていろいろ学ぶことがあり、それはそれで価値もあるでしょうが、外国で子供を学校に行かせて、お母さんは家でご飯を作って待っている、というのは何かとてもヘン。

さて、アメリカの公立の小学校は、外国人を受け入れられないところも多く、(外国人を受け入れるには、学校がワシントンDCの移民局に登録をしていなければなりません)また、受け入れ可能な学校であっても、公立には一年以内しかビザを発行せず、また、ビザを発行する領事が「小学生が留学して何になるんだ。しかも地域の住民の税金で賄われている学校にタダで入れようとしておかしいではないか。要はアメリカ人にしたいんだな。それでは留学ではなく移民であるから、ビザは発行できない」、なんて考える人がいたりして、無事、留学に漕ぎつけられるかどうかわかりません。

ビザが発行されやすい私立の場合は、親が一緒に住んでいて学校の送り迎えを親がしなくてはなりません。公立校のように、小さな一つの地域の人だけがきてスクールバスがぐるぐる回るということができないため、必ず親の送り迎えが必要です。お母さんは学生ビザでないため、ビザなしで三か月毎に出たり入ったりしなければならず、あんまりやっていると入国のときに移民局の係官にあらぬ疑いをかけられる場合もあります(アメリカ人になりたい人だなとか、何をゴゾゴソアメリカでやっているんだとか)。

では、寮制の小学校はどうかというと、これは、なかなかありません。私の方の調べでは小学校三年生ぐらいから寮に入れる学校がありますが、アメリカ人の場合は、そのほとんどが月〜金までで、土、日は家庭で過ごすことになります。

何と言ったってまだ子供ですもの。

私のところでも、小学校六年生の子供の留学のお手伝いをしたことがあります。どんな世の中も実に色々な家庭があるもので、両親が離婚していたり、自分一人で生んだり、かつ、お母さん、あるいはお父さんの仕事が夜、または、二十四時間に近いようなものなどです。決して、考えがおかしいとか能力が劣るとかいうわけではなく、たまたまそのような家族と生活になっちゃったわけです。そういう理由もあって、日本の中で寮制の学校を探したりお手伝いさんをつけたりするより、いっそのこと設備やケアの行き届いた外国で教育を受けさせたいと考えるわけです。とてもよく理解できます。しかし、いざ留学すると、やはりいろいろな問題が起きます。突然、おねしょが始まったり、一言もしゃべらなくなったり、ルームメートを殴ったりと、いずれも幼いために精神状態が不安定になって起こるようなことがいっぱい出てきます。そのことで家族は、振り回されることになります。

小学校六年生でも、十分に大人で、堂々と乗り切ったという子もいるかもしれませんが、この大平の世に、あまりに健気過ぎるではありませんか? たかが英語のために。

英語ではない、今の日本の教育が嫌なんだ、という人もいます。気持ちはわかりますが、そこまで教育に入れ込まなくてもいいじゃありませんか。ファミリーで、いつくしみあってさえいれば。子供は立派になりますよ。

小学校での留学は、海外赴任で悩んでいる人たちの問題のところへ、まさに自ら入っていくようなものなのです。人間っておかしいですねぇ・・・。

ちなみに英語力と学力及び思考能力は全く違います。言語に振り回されるあまり思考力が低下することだって充分あります。

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