留学事情:栄陽子留学研究所
■ 当世留学事情

<< backtopnext>>

第73回 どちらが魅力?日米就職活動 『教材新聞』平成13年4月23日号掲載 

本年度出発の人のためのオリエンテーションをしていた会場でのことです。ちょうど向かい側の会議室で、就職の面接をやっていました。大学四年生の女の子たちが何人か、まったく同じ服装で順番を待っています。聞けばある大手の予備校の面接だということです。リクルートスーツと呼ばれる黒のスーツに白いブラウス、鞄まで同じです。終わって出てくると「あー、キンチョーした!!」と言って、待っている人たちと喋りまくります。大学は違うが説明会で一緒になったということです。順番が来ると、姿勢を正して、声も違えて「失礼しまーす」と入っていきます。これじゃあ、みんな同じようで、選ぶほうだって大変ではないかという気がしました。本人たちに、それだけ同じ服装では自分の個性をアピールできないではないか、と言いますと、「そうなんですけど……」と歯切れの悪い返事。「そちらでは留学のセミナーですか? どんな人が行くんですか?」と言うので、「あなたたちと同じような人もいっぱいいるわよ。大学院かもう一度三年生で大学に行くかだから、二年から四年くらい留学するかな」と話すと、「エー、二年も留学するんですか……信じられない……」ということで、また、目の前の面接のことで仲間と情報交換です。

就職の面接に同じ服装で行くなんて、本当におかしな国ですが、目の当たりにすると、ますます、気持ち悪く思えてきます。自分に似合った服装で面接すればいいし、そういう服装で来た人をそれが理由で(すなわち、みんなと同じではないから)採らない会社だったら、やっぱり、これから先はむずかしいと思いますが、いかがなものでしょう。

アメリカの大学には、就職先を紹介するという考えはありません。そもそも、学生は卒業するのに精一杯で、なかなか就職活動まで頭が回りません。何度かこの紙上で述べましたように、卒業して半年〜一年くらいの間にだいたい次のことが決まるといったものです。

日本人留学生が大学を卒業すると、アメリカでは「プラクティカルトレーニング」というシステムがあり、一年間、自分の卒業した専門分野に限り仕事に就くことができます。その間に、いくつかの企業を面接して、採用されることになれば、「H」と呼ばれる就労のためのビザを申請してアメリカで働くことができます。昔は、このプラクティカルトレーニングのシステムがなかったために、卒業と同時に学生ビザが切れるため、日本に帰国しなければならず、現地での就職を探すのに時間そのものがないという状況でした。

今ではこの新しい制度のお陰で、アメリカ国内で仕事を探しやすくなりましたが、やはり留学生向けの仕事といえば、日米に通じていて両方の語学ができるということで、日系企業に一番ニーズが多いため、圧倒的に場所はニューヨークということになります。

やはり専攻はビジネス関連が有利です。プラクティカルトレーニングもHビザも自分の専攻したものに関係のある仕事に就くことが原則だからです。したがって、アート系を出た人が銀行に働くということはできないのです。アート系を出た人はファッション関係の会社に働くことは可能です。しかしビジネス系の人は、どんな種類の会社でも働くことができるわけです。

大学を出たばかりの人間ですと、入社してもらえる年収がだいたい25000ドルくらいです。この金額ですと、ちょっとニューヨークで暮らすのは厳しいのです。ニューヨークは大変なお金持ちか超貧乏な人々にはとてもおもしろい所と言われています。その上、今は家賃を初めすべての物価が高いのです。25000ドルで侘しいニューヨーク生活を送るか、やはり親に頼み込んで仕送りをしてもらうかしなければなりません。

地方ですとそのくらいの費用でもやっていけますが、地方には日本語が喋れるということをプラスに思って雇ってくれる企業もあまりありません。それなのに企業としては、ビザのために色々と書類提出を余儀なくされるため大変なので、やっぱり雇いたくないわけです。

また、留学生のほうも、勉学中は田舎生活でも我慢しますが、一旦卒業してからのアメリカ生活ともなりますと、やはり、それは都会生活をしたいわけです。

こういうわけで、アメリカで残って働きたいと思っても、そううまくはいかないのです。日本に帰国して外資系に入ったほうがお給料はずっと高いのです。それに、最近では日本の普通の企業も、外国の大学の卒業生を雇わないなんて、あまり言わないようになってきました。もっともまだそんなことを言っている会社は、とても将来見込みがありませんから、行かないほうがいいのです。

それでも、一年間アメリカで働くということはとても魅力で、プラクティカルトレーニングをしたいという希望はとても多くなっています。

アメリカでは、新卒の人を企業に紹介する人材紹介業もあり、日本人を扱う会社が、けっこう繁盛しています。日本では新卒者を紹介することはできないのです。要は、大学が就職のための予備校で、企業にドンと送る役を務めているため、人材紹介業なんて大学・企業双方にとって邪魔になるわけです。

ところで私の友人の息子は東京のある大学の四年生で四年次の必要なクラスが一クラスしかないため、本人は実家に帰って週に一度だけ深夜バスで東京に来て授業を受けていました(そのほうが費用も安かったそうです)。それを聞いた教授が、レポートを出せばいいのでもう5月から授業に来なくていいと言ってくれたそうです。ホロリとさせる美談ではありますが、やはり日本の大学はヘンです。勉強させる所ではなく、学費を取って企業戦士を輩出させる所にほかなりません。

<< backtopnext>>
留学|アメリカ留学|高校留学