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中高年の留学についての新聞社からの取材が続いています。新聞社はいつもネタを探していて何か目新しいものが出ると、どこもかしこも飛びついてくるのです。その上、新聞社系の雑誌もやってきます。
内容は、中高年の留学が増えているというものですが、私の方では、特に増えているわけではありません。子供の留学も年齢の高い人の留学も、主婦の留学も夫婦で留学するのも昔からあります。
ただ、相談に来る人は毎年、どのケースもそれなりにありますが、やはり二年、三年の留学ともなりますと、実際に実行できる人は、ほんの一人か二人です。そういう話をすると、新聞社の人はガッカリするのですが、それでも、自分たちが立てたストーリーを変えたくないので、何とか食いさがって最近増えているという兆候の一片でもつかもうとします。
2001年度に向かって準備中の一番年長の人は60歳です。定年を迎えて第二の人生ということで、新聞記事にはピッタリの内容です。
この方は、趣味でコツコツ勉強した英語をもう少し体系立てて整理し、学び直したいと考えられたようでTeaching English as a Second Languageというのを勉強する計画です。アメリカは、レベルの高い専門的なものは大学院からというのが常で、この分野も大学院からしか始まりません。大学院修士課程で平均二年かかります。ご家族は置いて単身で行く予定です。費用は退職金を当てられる予定です。子供も成長しローンも払い終え、あとは年金で生活できる目途も立ったので、ということです。妻を置いて、退職金をつぎ込んで、ということが新聞のネタになるほどのことのようです。よく妻が承知したな、妻を一人残して、妻は文句を言わないのか、といったようなことが興味の一つの対象です。
単身赴任なんていうのがごく当り前として行われているこの国で、何を今更と、思わずにはいられません。貯蓄が大好きの日本国民ですから大切な退職金をそんな形に使ってしまってどうするのか? 勇気があると、皆が思うのかもしれません。新たに勉強して修士号でも取ってこられれば、年齢が高くても、何らかの仕事があります。ただし、欲張らなければです。仕事がないのでは? とはよく言われることですが、私は、今まで当方から留学してきた人で仕事がなかった人の話は聞いたことがありません。理想とする仕事がないというのはわかりますが、理想もよく聞いてみると、賃金が高くて、会社の内容、環境、諸条件がよくて、自分の満足できるポジションで云々など。随分自分に都合のよい話が多いものです。そういうものではなく本当に自分のやりたいものがある人(少数ですが…)は一年でも派遣の仕事をしながらチャンスの来るのをじっと待っています。
昨年、留学された55歳の男性は、サインランゲージ(手話)を勉強するための二年間の留学です。
ボランティア活動をしていて、定年後、それを本格的に始めようとうことです。
こういった方々に共通しているのは、心のどこかで、本当の安全とか保障なんていうものは、存在しないんだということを、体験の中で会得し、今やっと好きなことが見つかったので、安全や保障を求めるより、好きなことをしたいということだと思います。
阪神淡路大震災をはじめ、地球や世界の動きを見ても、この世に絶対の安全や将来の保障なんてあり得ないなど、自然も人間も解明できない存在なのに、どうして人はみな、目先の安全や保障を求めたがるのでしょうか。おまけに、その安全や保障の概念といったら、その時代のその小さな地域の一つの考えに過ぎないにもかかわらずです。そのために、何か自分の生き方が自分にしっくりいっていないという人が多くいるように思えてなりません。
四十代で、「流通業に携わっているが、自分自身も会社も、もう擦り切れてしまっているようで苦しくてならない。いっそのこと、留学して大きく息をし、新しいものをいっぱい入れて、もう一度人生出直してみたい。そのために、昨年買ったばかりのマンションを売って資金を作り、留学準備を始めたい。子供はいないし、仕事をしている妻は賛成しているのだが、周りからは、無謀だとか帰国してその年齢では仕事がないと言われる」、と相談に来ます。
人間は自分が充実しているかどうかが一番大切で、各人に価値観が違うのです。高い給料、大きな企業、マンションを持つことが安全と思う人も、そんなもの無くても、人生おもしろいと思える人もいるし、だいたい、そんなものが安全でもないということは、毎日の新聞のあちこちに出ているではありませんか?
どんな人生が充実しているか自分が何に向いているかとても難しいので、だから、ついつい取りあえず安全な方向へと人は向かうのかもしれません。それなら他人が、自分がおもしろそうだと思う人生を歩き出すのにいちいちお説教をすることはありません。
ビジネスマンが読む雑誌に、これから就職する人たちへの話がいっぱい載っています。
「何がしたいか何がやれるか明確に示せる人でないと企業は採用しません。ただ漫然と大学を出たとか留学したとかいうのではダメなのです」というような話がいっぱい踊っています。本当かしら? 二十代の若者でそんなことが明確な人ってどれほどいるのでしょうか? また、そうであったとしても、一年もたてばコロリと変わるというのが普通じゃないでしょうか? 面接官の人だって、とてもとてもそんなに確信をもって相手を見抜けないから、取りあえず、一流校卒を採っていれば安全と思ってしまうんではないでしょうか…。
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