留学事情:栄陽子留学研究所
■ 当世留学事情

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第67回 「全人教育」の学舎 ――リベラルアーツカレッジ 

『教材新聞』平成12年10月30日号掲載  

今日はCollegeとUniversityの違いについてお話したいと思います。一般に日本の人はUniversityの方がCollegeよりレベルが高いと思っている人がとても多いのです。したがって、Collegeではいやだ、Universityに行きたいといったことを言う人がいます。また、Collegeは二年制大学だと信じている人も多いのです。

アメリカでは、University と Collegeが厳密にどう違うかというのはなかなか難しいのですが、大まかにいうと、Universityとは、たくさんの分野を持ち、大学院を併設している総合大学で、Collegeは、大学レベルが中心で専攻できる分野が少ない大学ということができます。

ただ、二年制の小さな大学にもUniversityとついていたり、Collegeとなっていても、どんどん規模が大きくなって専攻できる分野が増え、大学院を併設しており、いつUniversityに名称を変えてもおかしくないというものもあります。

もともと、Harvard や YaleなどもCollegeであったのが、組織がどんどんふくらんでUniversityになっていったわけですが、大きいことはいいことだと考えるのなら、 Universityの方がcollegeより上ということになりますが、それはあくまで組織の大きさの問題で、大学の質と必ずしも関係があるわけではありません。

ボストンには、Boston UniversityとBoston Collegeというのがあって、両方とも立派な大学ですが、ボストン辺りでは、どちらかというとBoston Collegeの方がレベルの高い大学と信じられています。

日本でならさしずめ、早大、慶大、日大などの大きな大学と、国際キリスト教大や聖心女子大、白百合女子大といった小規模大学との違いととらえればよいと思います。

アメリカにはほかにも、Instituteという名称があり、これは、どちらかというと工科大学や芸術大学など、専門分野に特化したものにつけられている傾向が強いのですが、それでも代表的なMIT(Massachusetts Institute of Technology)にも、経営学部などがちゃんと存在します。

日本から女性ではじめて留学した大山捨松や津田梅子は、Liberal Arts Collegeとよばれる大学に留学しましたが、このLiberal Artsが、また、日本の人にはさっぱり理解してもらえません。要は、Collegeの代表みたいなもので、アメリカのHarverdなど、元は全部Liberal Arts Collegeから始まっています。人間に基礎的な教養をつける大学というものです。

Liberal Arts Collegeは、アメリカにある独特のCollegeで、翻訳不可能です。その理念は、「全人教育」をするというものです。学ぶことが好きで、読書が好きで、さまざまな体験をすることをいとわず、在学中に自分の興味の持てる専攻を探したいという学生には最適な大学といえます。ほとんどの学生は、大学の専攻をキャリア指向で選択しがちです。しかし、アメリカのビジネス界のリーダーたちは、幅の広い、つまり、学生時代に全人的な教育を受けた人の方が管理職になるための準備ができていると述べています。通常、学生は三年次に進級するまでに専攻を申請すればいいようになっています。コンピュータ・サイエンスと、経済学または演劇というように二つの専攻を取ることもできます。また、とくに一つの分野に集中することなく、さまざまな科目を修得して卒業することになります。英語力や海外での生活能力が足りない学生にとっては、Liberal Arts Collegeは、大学側の面倒見がよく、留学をするには最適でしょう。卒業後に大学院に進学することや、二年後に州立や総合大学に編入することも可能です。

日本の教育が今、とても揺れています。司法修習生が指導判事に、「有罪としますか、無罪としますか」と、結論を先に聞いてくるというようなことや、将来医者になる人がきちんとした挨拶の仕方も知らない、しかも、そろって優秀な人材であるということで、みんな大変な危惧を抱いているということです。受験勉強の弊害でもあります。医学部を受験するのに生物学を勉強していなくてもよいといった、考えられないことが起きていたりするからです。また、大学入学後、燃え付き症候群になっていて、ちゃんと勉強しないというようなことも取り沙汰されています。

すべてのバランスが取れている人こそ優秀であるべきですし、人の生死を左右するかもしれない、あるいは、大変な悲しみを伴うかもしれないような職業につく場合は、とくに、昔からいわれる徳のようなものが必要です。受験のように、すべてをかなぐり捨ててただ一方向に向かって走り、その面の結果だけでその人を判断するのは、甚だ危険です。

本来、バランスの取れている人は、徳も備わった上での優秀ということなのですが、あまり小さいときに一方向に向かってのみ叱咤激励し、他のことは考えるなということにすると、バランスを崩してしまうかもしれません。

アメリカでは、大学レベルくらいにならないと、自分自身の能力や将来の方向性はあまり考えられない、と思われています。したがって、大学の中で自分の方向性を考えることが大切で、それができる場の代表がLiberal Arts Collegeです。

レベルの高い専門性を身につけるのは、大学レベルを終えてからでないと無理、という考えがその根底にあります。

日本も、大学院レベルの法学部や医学部をつくろうという動きがありますが、組織替えをするというのは、改革者を常につぶそうとする日本の土壌では、とても難しいものがあります。

ですから、たくさんの人が留学して、声高に日本の教育の改革を叫ぼうではありませんか。

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